変えてはならない平和憲法~小森陽一さん縦横に語る
2月17日、「平和憲法9条を守る都南の会」が主催した、「新春講演会」がふれあいランド岩手のふれあいホールで開かれ、180人が参加しました。
最初に、「みんなで歌おう」のコーナーでは、「どこかで春が」「春の小川」などの春を呼ぶ歌、「千の風になって」「ふるさと」などの曲をみんなで歌い、憲法9条の朗読が行われました。
講演では、九条の会事務局長で、東京大学大学院教授の小森陽一さんが「変えてはならない平和憲法」と題して約1時間30分お話しました。
小森氏は、新テロ特措法をめぐる衆議院での「3分の2の再可決」について「民主主議を踏みにじってもアメリカの戦争への協力をするためのものだとのべました。参議院での否決は2007年の国民の世論であり、安倍首相の「憲法かえる」に対て「変えない方がいい」と判断した結果だと指摘しました。そしてその世論を作ったのは「9条の会」の運動だと、自民党の加藤紘一元幹事長の言葉も紹介しました。
さらに小森氏は、2008年は「絶対変えてはならない」「変えないで生かす」「9条を変えるのはもったいない」という世論を作ることだとのべ、そのためには、どのように変えられようとしているのかをよくつかみ知らせることだと、自民党の「新憲法草案」の内容を紹介し、現憲法9条第2項の「戦力の不保持と交戦権の放棄」を放棄することは「戦争放棄」を「放棄」することだと詳しく解説し、草の根から9条の会の運動をさらに広げようと呼びかけました。
衆議院の3分の2歳議決での新テロ特措法強行・・・歴史は繰り返される
小森氏は、「2008年がとんでもないことで始まった」と新テロ特措法が、2度の国会延長の末、参議院で否決されたものを衆議院で3分の2の再可決で成立したことをあげました。
そして、衆議院での再可決が57年振りであり、57年前の再議決が「モーターボート競走法」であったことを紹介。日本船舶振興会が莫大な利益を上げ、政財界に君臨する要因となった法律がなぜ異常な「再議決」で成立したのか。その影には、朝鮮戦争でアメリカ軍の上陸作戦に全面的に日本の船舶業界が協力加担した見返りがあったと指摘。
民主主義を踏みにじっても法律を押し通す。その背景には、アメリカの戦争への協力という共通したものがあること。歴史は繰り返される。と指摘しました。
2007年「変えないほうが良い」の世論を示した。
小森氏は「新テロ特措法は、参議院では否決した。それが2007年の世論であった」「選挙後、民主党の小沢代表が『テロ特措法反対』を打ち出したのは、その世論を読みきった結果であることにある」と指摘しました。そして、その世論を作ったのは九条の会の運動だと述べ、自民党の加藤紘一氏と会談した際にも「若手の議員が『九条の会にやられた』と言っていた」と語ったことを紹介しました。
その根拠として、施行60周年の憲法記念日を前にした昨年4月に、マスコミで相次いで「9条変えるな」の世論調査結果がでたことを紹介しました。4月8日に、読売新聞が発表した世論調査で、3年連続で「憲法を変えないほうがいい」が増え、「変えたほうがいい」が減ったこと、「9条は守ったほうがいい」が多数派だと報じたことを皮切りに、すべてのマスコミ発表で「9条」に関しては「変えないほうがいい」が多数派となったことを紹介し、「九条の会」ができて3年間で、草の根からの運動がおきている結果だと述べました。
2008年~「絶対変えてはならない」「もったいない」の世論に
その上で小森氏は、2008年は「変えないほうがいい」から「絶対変えてはならない」「変えないで有効に活用するためにはどうするか」「憲法9条変えるのはもったいないことだ」という一致点を作っていくことが求められていると述べ、そのためには、「どう変えようとしているのか」、「変えたらどんな日本になってしまうのか」を多くの人にわかってもらうことが大事だと、自民党の「新憲法草案」を示して具体的に解説しました。
9条2項 「戦力の不保持」「交戦権の放棄」が命
自民党の「新憲法草案」では、第2章が「安全保障」となって「戦争放棄」が「放棄」されていることを指摘。自民党案で、第1項「武力による威嚇、又は武力の行使は行わない・・・」はそのまま残しながらも、第2項の「戦力の不保持・交戦権の放棄」が捨てられたことの意味を詳しく話しました。
自衛隊は「戦力ではない。自衛のための実力だ」といわざるを得ず、かつて国会で「戦車」について首相が「あれは戦車ではない『特車』だ」などと珍答弁していたことなども紹介しながら、世界第2位の軍備を持ちながら、一度も実践でそれを使ってはいないのは、現行9条の第2項があるからだとし指摘。ここにアメリカが憲法9条2項を変えさせたい根拠があると指摘しました。自民党新憲法草案で9条第2項に「総理大臣が指揮権を持つ自衛軍」を規定していることは、「国の交戦権」を持つことを宣言するものだと指摘しました。
戦争も「自衛のため」が口実、自衛軍が「憲兵隊」「戒厳軍」の役割も
9条第1項だけでは戦争を防ぐことにならないことについて、第2次大戦後のアメリカの戦争を例にとって明らかにしました。朝鮮戦争は国連決議に基づく「制裁」であり、ベトナム戦争は「南ベトナムとの軍事同盟による集団的自衛権の行使」であり、アフガニスタン攻撃は、9.11を口実にした「アメリカの個別的自衛権の行使」、イラクへの攻撃は「イギリスとアメリカの2国間軍事同盟による集団的自衛権の『先制的行使』」という理屈がついている。国連憲章の「自衛権」を根拠にしている。
自民党の草案では、9条3項に「国際的協調して行う活動」を任務にして、アメリカとの「集団的自衛権」を規定し、さらに「公の秩序維持」を自衛軍の任務に規定し、自衛軍が「憲兵隊」と「戒厳軍」の任務を併せ持つことになると指摘しました。
人権への制約、戦争への協力を強制、軍事裁判も~憲法の中に「治安維持法」も
小森氏は、現行憲法の第12条、第13条に規定している「人権」についても、自民党草案で「公益及び公の秩序に反しない限り」と制約がつけられていること、憲法前文案では、国民に「国を愛し、守る責務」を規定し、「国防の義務を果たしているかどうか」=「公益及び公の秩序に反しないかどうか」によって、人権にも制限が加えられることになること、草案第76条に「軍事裁判所」の設置が盛り込まれ、これまでの「民事訴訟」「刑事訴訟」に加え、「軍事訴訟」が加えられていることなどを紹介しました。そして、自民党の「憲法草案」の中に、「治安維持法が組み込まれている」と、その危険な内容を明らかにしました。
教育基本法改悪で戦争への人づくり、格差社会は戦争社会だ
小森氏は、何のためにこんな国にするのか。それはイラク戦争などに見るアメリカの軍事産業やイギリスの石油産業などの大もうけのための戦争に日本のお金だけでなく、人員まで動員させたいということだと指摘し、実際に戦争にいくのは私たちの子どもや孫の世代だ。そうなっていいのかという問いかけが大事だと述べました。
憲法改悪の前に教育基本法を変え、学力テストで全国をランク付けしようとしているのは、そうしないと軍隊に入る若者が出てこないからだと指摘。格差社会の中で「『ネットカフェ難民』より『名誉の戦死を』という声さえ出ている。「落ちこぼし」「負け組み」を作って軍隊に囲い込みたいということだ。格差が固定するということは、社会全体を戦争社会にすることだと指摘。憲法25条と9条も一体のものだと強調しました。
憲法9条生かせば、世界が変わる
小森氏は、最後に、憲法9条を生かせば、どのような未来が開けるか、として、北朝鮮の核開発疑惑への対応についてふれ、南北朝鮮の間の目標が「朝鮮戦争の終結(現在は休戦)」にある。55年もの間「休戦」という状態にあるが、終結すればアメリカ軍も居座る口実がなくなる。朝鮮半島と日本が「非核」となれば、中国やロシアに対して「核廃絶を」とイニシアチブをとることが出来るようになる。「核戦争の恐怖から抜け出す道が見えてくる」とのべ、「守りの運動ではなく、攻めの運動だ。草の根からの9条をまもる運動を広げよう」と呼びかけました。
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