セミナーの報告① 格差社会の本質は「貧困」の増大にある~中西講演
セミナー初日(2月8日午後)、中西新太郎横浜市立大学教授が、「『格差社会』の何が問題か」と題して記念講演しました。
中西氏は、今日の日本社会において「格差」が顕在化してきたのは、「1997~8年変動」といわれる90年代後半からであり、今では政治的立場を超えて共通語になっていると指摘。相対的な格差も問題であるが、その本質にあるのは「貧困」状態に置かれている人がこの10年で大きく拡大してきたことにある、と指摘。
2006年度の国税庁の発表で、年収200万円以下が1000万人を超え、年収300万円以下が38.8%と4割近くになっていること。生活保護受給世帯が100万世帯を超え、就学援助がこの5年間で50%も増えていることなどを示しました。そして、最近学生の感想文の中に、「家族には明日食べる米もない」と書いてきた学生がいたことを紹介しました。
中西氏は、「貧困」とは何か、その概念は、として ①「絶対的な貧困」~生きていくために最低限必要なものが満たされていない状態~福祉国家が機能すれば解決できる に加え、②それだけでは解決できない「相対的剥奪」~たとえばその指標として(月に一度親戚や友人などを呼んで食事をすることがあるかどうか) ③社会的な生活から排除される「社会的排除」まで、つまり、「食べる」事にとどまらない、社会の中でどう生きていくかということまで含めた豊かな概念であり、「あってはならない、個人的には解決することが出来ず社会的に解決しなければならないもの」として豊かに発展してきた概念だ。と紹介しました。
そして、今日日本社会における「ワーキングプア」の実態を詳しく述べて、特に若年層の社会的排除が深刻になっていることを紹介しました。
中西氏は、この「貧困」を核心にした「格差社会」を作ってきた新自由主義の「構造改革」路線について講演の冒頭に、その背景にあるのは、①グローバル資本主義のもとで多国籍企業がダイナミックに活動を展開できる仕組みを作ること ②東アジアにおける日本の経済的市の相対的低下のもとで、経済的・政治的権益を保持し続けるという課題にこたえるためのだと指摘。そのための「規制改革」、構造改革が、日本社会の人と人との関係や社会全体をこれまでと違うものに作り変えてきたことにあると指摘しました。
そして、その自治体版である「自治体構造改革」の特徴として、①自治体そのものの性格の変質~住民の要求に基づいて必要な事業を行う組織から、「マネジメント」を行う組織に変質 ②「トップダウン」方式などに見られる、自治を支える「住民の民主主義」機能のきりくづし ③「市場化」の促進で営利企業の巨大なマーケットを作り住民に大きなリスクを負わせることになる。ということをあげ、この行き着く先は「貧困大国アメリカ」に見ることができると、アメリカにおける「民営化」が何をもたらしているかを詳しく紹介しました。
そして、貧困問題の解決のための方向として、①憲法25条の「生存権」の保障の内容を豊富にすることが必要。基本的人権を保障する「自由権」に加え、生存権を規定する「社会権」のどちらも人間の持つ根源的な権利であるという考えを確立すること ②具体的には、安心して働き、くらせる「最低限保障」の政治を確立すること ③働き方の保障~人間らしい働き方の確立を確立すること をあげました。
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