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2008年2月12日 (火)

セミナーの報告② 地域共同体の再生、顔の見える関係こそ「自治」の基本~滋賀県日野町 藤澤町長

  Dsc04286 滋賀県日野町の藤澤直広町長は、「日野町がなぜ合併を拒否したのか」について、基本には、町がすきか、愛着があるか、にあった。1000年以上前から「日野」という地名がついていたこと、800年も続いた「日野まつり」(曳山が16基も繰り出す)があり、「この町をつぶされてたまるか」という思いが住民の中にあった。合併への賛否は1/3づつ。「よく分からない」1/3。町がなくなることを「よく分からないまま決めていいのか」ということだった。議会への請願、2度にわたる「直接請求」が議会で否決され、町長リコールを経て、3年前に町長になった。と紹介しました。(写真をクリックすると大きくなります)
  藤澤町長の「住民自治」に対する深い思いと、軽快な語り口。この方のお話をお聞きしただけでも今回のセミナーに参加した意味があったという思いをしました。

日野町が取り組んでいる「自律の町づくり計画」について、藤澤町長は「自分たちの町のことは自分たちで考え、決めて行動する」ということであり、そのためには「情報の共有」が大事だと述べました。就任直後の財政分析で、「このままでは3年間で28億円足りなくなる」ことが明らかになり、其のことも含めて情報公開した。新聞は「合併しなくてもやっていけると言っていたのに、やっていけないということか」と書かれたが、「それは三位一体改革の小泉改革のせいだ」と町民にもお知らせする中で、みんなでこの町を作っていこうと呼びかけてきた。と述べました。
 大事なことは「地域共同体、地域コミュニテイの再生」だ。地域で生きていく中で、家族、地域、行政の役割分担をしながら、全体として公のサービスを実現するということだ。あえて「うっとうしいコミュニテイの再生」と掲げている。コミュニテイというのは「好きな人たち」の集まりではないから、嫌いな人も含めて議論をし、主張もすれば、譲りもする。そういう意味では民主主義の原点ではないかと思う。「うっとうしい関係を大事にしよう」「うっとうしいから楽しい関係に」ということが地域コミュニテイ再生のキーワードとなっている。人と人との絆をどう強めていくのか、支えあう社会をどう作っていくのかということが大事なことだと思う。と述べました。
 具体的な成果として、県管理河川の浚渫を住民が取り組む事業を紹介。河川の土砂堆積の浚渫が進まない中、地域の区長さんから「自分らで浚渫をやっていいか」と申し出があった。県に相談したところ、県が重機やダンプ代のリース・燃料費などを県が出すモデル事業となり、やがて正規事業に発展した。日野町では年間3ヶ所くらいで川ざらい事業が取り組まれている。ことを紹介しました。

「自律の町づくりと地方自治の可能性について」
との問いに答えて、藤澤町長は、大事なことは「顔の見える関係」ではないか。「役場行政と住民との関係で顔が見える」「住民と住民との間で顔が見える」「住民と議員との間で顔が見える」ということが大事だと述べました。
 日野町は人口2万3千人で、83集落ある。これぐらいであれば役場の職員は集落の特徴を知っている。顔が見えるという中で信頼関係が出来る。住民同士の間でも、「あっちであれだけ金をつかったならこっちでも」ではなく「あっちの地域もがんばっているから、こっちもがんばろう」とならなければならないのではないか。住民と議員との関係でも、選ぶときだけでなく、その後の議員活動にも関心を持ってもらうことが必要ではないか。と述べました。人が生きていくうえで、存在と役割がはっきりみえるほうがよい。役割を果たす住民がいてそれに耳を傾ける行政があって信頼関係が生まれる。「自治」というのはそういうことではないか。
今日の地方自治・地方財政がおかれている状況との関係で藤澤町長は、「地方財政は乾いたタオルをもういっぺん絞らないと・・・」という現状だ。都市と地方との格差という世論も広がってきた。そういう中で夏の参議院選挙は、「痛みを伴う改革」を当然視する流れから「地方や弱者に優しい政治に変えなければならない」ということが示されたのではないか。そういうことが福田首相の所信表明にもちりばめられ、来年度の交付税も少しだけども増やされた。
 しかし、その根っこには「骨太方針2006」による「歳出歳入一体改革」の枠がはめられている。その綱引きをどうしていくのか。地方や弱者に優しい政治を大事にする中で、この国の財政再建を始めとして国政のあり方を作っていく。国全体の金の集め方をどうするのか、国全体の金の使い方をどうするのかを議論しないと地方自治体の裁量は発揮できない。と述べました。

「合併しない町で、財政が厳しく、サービスを削ったり、職員を削ったりして何とかやっていこうというのは間違いではないかと思っている。日野町ではどんな努力をしているか」との会場からの質問に、藤澤町長は、次のように答えました。

 「合併しない町が大変ではないか」ということだが、まず平成の合併の総括の視点は3つある。①「合併しないと財政が大変だ」といったが、財政はどうなったのか。合併した自治体が財政的に大変でないのか。というとそうではない。多くの合併した町が貯金を取り崩している。新市計画も思うように出来ないという状況ではないか。決して合併すれば財政が豊かになったということではないのではないか。滋賀県には13市13町があるが、日野町が破綻するようならその前にほとんどの町が破綻しているのではないか。
「合併したらサービスは高く負担は低く」といったがどうなったか。そうではなく「サービスは低く負担は高く」なったのではないか。中心部に合わされて独自のサービスは切り捨てられているのではないか。県庁所在地と合併したある町では「中学校給食はやめよう」といわれている。
一番大事な自治の機能は前進したのかどうか。前進したというところはまずないのではないか。

三位一体改革というのは、合併した町にもしない町にも同じように大変な状況を生み出している。かつては毎年毎年予算の規模も伸び、一億伸びれば一億の新しい施策を打とうということが出来た。今は、毎年毎年予算が減ってどこで削るかということになる。毎年毎年減ってくる収入の中で、どう公共サービスを維持するのか、どこを見直すのかということでやらなければならない。だから、申し訳ないが職員の給料の独自カットを行っている。職員定数も縮減している。補助金もカットをしている。そういうやりくりも含めて、町全体のトータルの行政サービスの水準をどう維持するのか。心を開いて職員とも住民とも歩んでいくということが必要ではないか。
 そのような中で、懸案の中学校建設に乗り出しているし、妊婦検診の公費負担もただちに5回にした。学童クラブも全小学校で実施し、不登校の子供たちの相談センターも設置し、来年からは障害児の療育学校も独自で実施する。いろいろなやりくりと工夫で凌ぎつつ必要なところに施策を打っている。
 大きく減らしているのはやはり人件費とハード事業だ。道路の改良事業は極力縮減している。平成19年度の道路改良予算は100万円で、維持補修費だけだった。前の年は5~6千万円。その前年も「一回休み」と1500万円ほどだった。そうやってメリハリをつけている。職員には苦労をかけている。しかし「削ることがだめだ」と言われたら、今の自治体は成り立たない。
 だから、自ら律して工夫しつつ、この国の財政をもっと地方重視にという声をどう上げていくのか、ということが求められている。と述べました。

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