焼却施設を持たない志布志市・・資源化率76%は10年連続日本一
日本共産党盛岡市議団の会派視察に出かけています。第一日は、鹿児島県志布志市のごみ処理行政についてです。
焼却施設を持たない同市がどのようにごみ処理を行っているか。それは、「徹底した分別と資源化」でした。
27品目の分別収集・・・資源化率76%で10年連続日本一
志布志市では、旧志布志町時代の平成12年度から19品目の分別収集を開始し、平成16年度からは生ごみの分別収集・資源化、同25年度から「小型家電」の分別と進み、現在では 27品目の分別(資源24分別、生ごみ、粗大ごみ、一般ごみ)を行い、資源24品目、生ごみの資源化はもちろん、粗大ごみについても資源化を徹底しているとのことです。
こうした分別の徹底によって、同市の平成26年度のリサイクル率はなんと76.1%で、全国の市段階で10年連続日本一でした。
市町村での日本一は、志布志市と埋め立て処理を共同で行っている隣の大崎町の81.9%。両市町は全く同じ方法でごみの分別収集に取り組んでいるとのことです。 岩手県の資料によれば、盛岡市の同年のリサイクル率は16.1%、県内平均では17.4%(平成26年度一般廃棄物処理事業の概要・岩手県)ですから、そのすごさに驚きです。
埋め立て地の延命どう図るか?・・焼却処理でなく分別の徹底で
志布志市が分別・資源化に本格的に取り組み始めたのは平成10年以降。合併前の旧志布志町の時代から。当時他の町と共同処理をしていた最終処分場が、このままでは平成16年度までに満杯になってしまう。
どうするか、①焼却施設を作って中間処理を行うか ②分別の徹底によって埋め立て処分の量を減らし最終処分場の延命化を図るか・・の検討の結果、後者を選んだとのことです。
莫大な経費・・焼却施設建設は地元をうるおさず後年度の負担も
焼却施設を持たないという選択をするに当たって、経費の見積もりをしたところ、建設に莫大な経費がかかり、大手プラントメーカーに市の税金が持って行かれるだけだなく、その後の維持管理についても、メーカー言いなりにならざるを得ない。地元をうるおさない。
反面、分別・資源化の取り組みは、その取り組みの中で雇用も生み出せる。そういう検討の中から、焼却施設ではなく、分別・資源化の徹底を選択したとのことでした。
ごみ処理経費は全国平均の半額、最終処分場も30年以上延命
分別・資源化の徹底・リサイクル率76%が何をもたらしたか。①市民一人当たりのごみ処理経費は全国平均の約半額(全国15,200円、志布志市8,992円・・平成26年度)となり、全国平均と比較して約3億円を福祉・その他の住民サービスに回すことができる。
②最終処分場・・「平成16年度までに満杯になる」という状況から、埋め立てごみの量8割を削減しました。
最終処分場(埋め立て)は、分別の徹底によって生ごみを除くことになり、においもなくカラスもいない衛生的な環境を維持しながら、「あと30年以上は大丈夫」ということです。
行政の確固とした姿勢と住民の協力
このような分別・資源化がどのようにして行うことができたか。詳細は省きますが、そこには、行政の側の確固とした姿勢・方針があり、徹底した住民参加と協力の取り組みがなされていたことです。各自治会の中に「衛生自治会」を別に組織していただき、ごみ減量分別化を、住民の協力で実施する体制を作っていただいたとのことです。
違反ゴミなどを正しく処理(出した人に返して分別していただく)するためにも、ごみ袋に名前を書いていただいていますが、自治会ごと、住民の協力の下に取り組んでおり、大きな混乱や異論もあまりなかったということでした。
さらに、ペットボトルやプラスチック製の容器等のの回収では、水洗いをして出していただくため、資源化に回す際の品質が100点満点の99点以上「特A」に評価され、日本容器包装リサイクル協会からの再商品合理化拠出金の収入が404万円(平成27年度)あったということです。市民の理解と協力がなければできないことです。
市の手厚い支援・・「環境学習会」開催一回5000円の補助
市の方は、こうした市民参加を推進するうえで、手厚い支援がなされています。各自治会に「資源ごみ分別報奨金」を拠出(年間700間年の予算)のほか、ユニークなのは「環境学習実施事業補助金」で、年間一団体につき一回、学習会を開催すると、その団体に5000円の補助金が出るということ。
学習会で学んだ結果は確実に「分別・資源化」についての市民の理解と協力が広がる、という仕掛けです。
志布志市では、そのほか様々な形で、資源化への住民参加の仕掛けが作られており、行政の確固とした姿勢が、様々な工夫を生み出し、市民参加にもつながっていることを確信しました。
新しい計画では、紙おむつの分別にも挑戦・・志布志市モデル海外へ
志布志市が、今年3月に策定した新しい「一般廃棄物処理基本計画」(平成28年度~37年度)では、現在「一般ごみ」として処分している「紙おむつ」についても分別・資源化をめざしているとのこと。新しい技術をメーカーとの協力体制をとンって試行し、今年の11月からモデル回収を始めるということでした。
そして、その計画策定の中心となった課長さんは、「この計画期間10年後、埋め立て処分をさらに9割削減し、限りなく埋め立てもゼロをめざす」という意気込みを語っているということです。
そして、この取り組みは今や国内だけでなく、海外(フィジー、サモアなど大洋州)への技術協力で普及されているとのことでした。
「大型焼却施設による広域処理」とは対極の取り組み
改めて「分ければ資源・混ぜればごみ」分別の徹底による資源化・・・これが単なるスローガンや「究極の目標」などではなく、取り組むべき実践課題であるということを認識させられました。
そして、いま盛岡市が中心となって8市町の広域で取り組んでいる「ごみ処理広域化」(一か所に集めて焼却処理する)は、志布志市などが取り組み実績を上げてきた方向とはと対極にあり、分別・資源化に逆行するものだと、改めて実感しまし。
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